2013年4月6日土曜日

ごめんといえた

今日は記念すべき日だ。なぜなら、はじめてかゆが「ごめん」と言えたからだ。強情な性格の彼は中々自分の非を認めず、あやまることが殆どない。どんぐりママにこっぴどく怒られた場合はともかく(この時はちゃんと「ぷしぇぷらしゃむ、まも」とベソかきながらポーランド語でつぶやくことができる)、これまで日本語で「ごめん」と言えたためしがないのだ。

どんぐり語には謝る表現がないのであろうか。否、存在しないのである。したがって他の言語で代用せざるを得ない。ここにそもそもの障壁があるのかもしれない。

「ぷしぇぷらしゃむ」とポーランド語では非常に複雑で発音も難しいのに言えて、たった3語からなる日本語の「ご・め・ん」が言えないのが言語能力に問題があるわけではないことは明らか。ようは気の持ちようなのである。

前置きが長くなったが、今日こんなことがあった。

どんぐりママの体調が悪いので今日はどんぐりパパが二人を連れて買出しに行った。ややは自宅でママの看病のため待機(と称してずっとテレビドラマにかじりついていたのだが)。

買出しの前に、久しく車を洗っていなかったので、洗車場に寄る事にした。乗車したまま洗ってくれるサービススタンドだ。洗車場に着いて長い迷路のような洗車スペースに入るとどんぐりたちは大はしゃぎ。巨大なモップの化け物たちが近づいてきてにゴシゴシと洗われるのだが、この化け物を指して「デメントール!」と叫び魔法の呪文でやっつけようと懸命になる(知る人ぞ知る、ハリポタに登場する顔と足のない妖怪で追い払わないと魂を吸い取られてしまう)。無事に洗車が終わり、屋上に出ると無料で掃除機を貸してくれるスペースがあるのでここでひとまず駐車。かゆとえゆも率先して車内の清掃にとりかかった。

やがて車内の掃除も一区切りしたところ、かゆが座席シートの土台に乗っかってジャンプしていたのだが、その間どんぐりパパは間抜けにもその結末を予測できずにノホホンと雑巾で窓を拭いていたのだが、そのうち「バキ!」という何かが割れるような鈍い音がしてハッとした。かゆの顔も一瞬青ざめ、どんぐりパパの目と合うと「う、やばい」という表情に切り替わるのが見えた。

後部座席のドアを開けて確認すると、案の定、かゆの足元に10センチ大のプラスチックの破片が転がっている。

「こら!」と珍しくどんぐりパパの雷がとんだ。本人も相当決まりが悪いらしく、情けない顔をしてオロオロしている。

この後、どんぐりパパは超不機嫌になり、それまで和気藹々としていた雰囲気は一転シーンと静まり返った。何も悪いことをしていないえゆまでが神妙な顔つきをしていたが、時々パパに話しかける彼の声くらいしか聞こえなくなった。かゆはわざとパパから顔をそらして窓の外を見つめている。

洗車場を去り、しばらくしてショッピングセンターに到着した。車を停めてでてきたところ、かゆをつかまえて「ごめんなさいいえるか」と聞いたら以外にもすぐに「ごめん」という言葉が返ってきたので一瞬耳を疑った。おもわず「え、何もう一回言って」と言うと小さな蚊の鳴くような声で「ごめん・・・」というので抱きしめて頬にチューして許してあげた。心あたたまる瞬間であった。車の部品が壊れたのは残念であるが、この出来事のおかげでもうどうでもよくなった。部品と引き換えにずっと大切な何かを手に入れた気がしたからである。

その後みんなで仲良く買い物を追えて家路についた。

めでたし。めでたし。

おっと。


そういえば、これがえゆだったらどうであったであろう。実は、えゆは中々の頑固者で強情ぶりでは時にはかゆの上を行くのである。多分、ごめんとは言えなかっただろうな。一方でお調子者のえゆは「ありがとう」という言葉はちゃんと使えるようになっている。ま、自分の罪を認める「ごめん」という言葉の重みに比べれば、「ありがとう」はまだ言いやすいのかも。

これに懲りずに今後に期待。二人とも着実に成長している証を今日垣間見た。